研究概要 |
本研究の最終年度は、生物多様性条約(CBD)に批准してはいないものの、途上国への遺伝資源アクセス、利用契約でおそらく世界一の実績を持つと考えられる米国のNIH(国立衛生研究所)を訪問し、特に傘下のNCI(国立癌研究所)の新薬発見プロセスとNCIが天然資源の取得及び利用に関し、オーストラリア、バングラディシ、ブラジル、コスタリカ、フィジー、アイスラシド、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、パキスタン、パナマ、パプアニューギニア、南アフリカ、ジンバプエ、韓国、中国との間で締結したMOU(覚書)の作成に関わったDr.David J.Newman (Chief ; Natural Products Branch Developmental the rapeutics Program, DCTD), Dr.Gordon Cragg (Special volunteer MH)、Stevenson M Ferguson, (Director, Division of Technology Development and Transfer, Office of Technology, NIH) Kathy Higinbotham, (Technology Transfer Specialist, Technology Transfer Brand Office, NCI)にインタビューを行った。MHは、生物探査及び資源利用にあたっては、生物多様性条約の定めに即して、PIC(事前の情報の基づく同意)を取得し、利益配分、技術移転、知的財産の取扱いも、契約により、当該国の求める条件に即して実行してきたとの意見が示された。ただ、国家としては、生物多様性条約という条約には議会の賛成が得られないため、批准できず、諸外国において米国に対する誤解があるが、その誤解を払拭したい、との意見が示された。なお、本研究成果をとりまとめる意味で、ネパールから2名の研究者、Bindeshwar Roy(ネパール王立植物園園長)、Saman B Rajbhandary(ネパール科学技術アカデミー教授)を招聘して、国際シンポジウム((財)国際高等研究所との共催)「遺伝資源へのアクセス・利益配分(ABS)の現状と課題-遺伝資源コピーマート構築に向けて-」を開催した。ネパールは、米国、欧州、日本ともまだMOUを締結していないが、その生物多様性が近年注目を集めている国である。同国の遺伝資源マネジメント政策の立案にも関わる研究者を招いて、遺伝資源に関わるインフラが未整備の諸途上国の今後の方策について、議論を行った。(財)国際高等研究所、北川善太郎副所長より、コピーマートの概念が紹介され、コピーマートのシステムを活用した、遺伝資源マネジメントのあり方が提言された。
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