1.本年度は、主としてベルリンおよび南西ドイツの劇場を訪問し、公演システムの特質等の調査研究をする予定であったが、昨年の3月に、南西ドイツ、すなわち、フライブルク、マンハイム、シュトゥットガルトの劇場を訪問する機会を得たことから、予定を少々変更し、ベルリンと、ドイツ語圏めなかでも大きな位置を占めるウイーンの劇場における公演状況を調査する。 2.現代ドイツの演劇(および場合によってはオペラ)の上演にあっては、「レジー・テアター(演出演劇)」と呼ばれる、戯曲(テキスト)よりは演出そのものの個性が尊重される傾向が強く、レパートリーの構築も、基本的にそれに照応した形でなされている。 3.本年度の演劇シーズンにおけるベルリンの劇場の状況については、主として上記2の論点をテーマとして、雑誌『葦牙』(同時代社)30号(2004年4月、発行予定)に、「射殺するノラ-現代ドイツの演劇状況III-」の表題で論文を発表する。 4.ドイツにおける近代的劇場の成立史、すなわち、「宮廷劇場から市民劇場へ」の歴史的移行の特質については、ベルリン・フンボルト大学哲学部第2部門の研究者と討論を行うとともに、ドイツの演劇・劇場史に関する文献を収集する。ただし、この領域に関する、細かな時代区分および地域区分における研究書および研究論文の収集、さらには、演劇史を専門領域とする研究者との間での研究打ち合わせ等は、来年度以降の課題となる。 5.「劇場への公的助成」の問題は、たとえばベルリンで、あるオーケストラが解散に追い込まれるような事態となっていることに如実に現れるように、ドイツにおいても深刻であり、幾人かの俳優たちへのインタヴューを通じて、その実態の一端を調査する。
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