1.本年度は、ベルリンおよび旧東ドイツの劇場を訪問するという当初の計画に沿って、2004年9月と2005年3月に、ベルリン市内、およびメクレンブルク・フォアポメルン州の州都であるシュヴェリンの劇場の調査を実施した。 2.同じドイツ語圏であるウィーンの劇場についても、短期間ではあったが、2004年9月と2005年2月の2度にわたって訪問し、調査を行なった。 3.人口が10万に満たないシュヴェリンのような地方中都市における劇場運営および公的助成の問題点について、とりわけ、人員が大幅に削減される状況のもとで、オペラ・バレー・演劇・方言による演劇・人形劇の5つのジャンルにわたって劇場の活動を展開する現状について、劇場の広報担当者のみならず、行政の文化担当者にもインタヴューを行い、調査を実施した。 4.本年度のドイツの演劇シーズンにおける劇場の状況については、雑誌『葦牙』(同時代社)第31号(2005年5月、発行予定)に、ベルリン・コーミッシェ・オーバーの演出の内容を表題とする「去勢されるドン・ジョヴァンニ-現代ドイツの演劇状況IV-」を発表する。 5.本年度は、独文の論文集《Asthetik der Inszenierung》についての書評の執筆を計画していたのであるが、少々遅れ、本年7月締め切りの雑誌に執筆を予定している。 6.ドイツにおける「宮廷劇場から市民劇場へ」の歴史的転回については、ゲーテ・シラーのワイマールにおける演劇活動の展開をさしあたっての手がかりとして研究を開始し、理論的には、同時代のヘーゲルの《美学講義》における「劇文学」についての資料収集を開始した。
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