1.本年度は、ベルリン、デュッセルドルフ、ドレスデン、ハンブルク、ウィーンの劇場を訪問し、各劇場の公演システムの運営状況、制作(演出)の特質等について、調査を行った。すなわち、2006年の9月から10月にかけては、ベルリン、ドレスデン、ウィーン、2007年2月から3月にかけては、ウィーン、ベルリン、デュッセルドルフ、ハンブルクの順に、それぞれの町の劇場に赴いた。 2.上記の都市の劇場のうち、デュッセルドルフ劇場と、ベルリンのマキシム・ゴーリキー劇場は、ちょうど芸術監督(インテンダント)の交代したシーズンにあたっており、それぞれ俳優や文芸部員にインタヴューを行い、芸術監督の交代による劇場の状況の変化について、聞き取り調査を行った。 3.ドイツの各都市における劇場は、芸術監督の交代とともに、俳優と文芸部は基本的にほとんど入れ替わるのが通例であり、上記のデュッセルドルフとベルリン・マキシム・ゴーリキー劇場においても、それは例外ではない。簡単に言えば、技術部門は自治体の「公務員」として劇場に残るのに対して、芸術部門は芸術監督の交代とともに、いったん解体され、前の芸術監督とともに新たな劇場へと転出する俳優たちも存在する一方、少なからぬ俳優・文芸部員は、それぞれが転出先を探して各地の劇場へと散らばって行くことになる。 4.本年度のシーズンの前半におけるドイツ語圏の劇場の演劇状況については、『人間科学研究』(北見工業大学)、第3巻(2007年3月発行)に、「現代ドイツの演劇状況 V」の表題で論文を発表したが(67-115ページ)、後半については、雑誌『葦牙』(同時代社)第33号(2007年7月、発行予定)に執筆の予定である。 5.ドイツにおける近代的劇場システムの形成過程(「宮廷劇場から市民劇場へ」)と、現在の演劇人養成システムについての研究は、本年度においても十分に展開することができず、来年度以降に向けての課題となる。
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