本研究は、スコットランドにおける女性の政治参画を促進した多様な要因を解明し、日本における女性の政治参画への活路を見出すための参考とすることを目的としている。 わが国では、近年、地方議員に占める女性の割合が増加してきたとは言え、未だ全地方議員に占める割合7%にすぎない。政治領域における女性の過少代表をもたらす要因は、女性の関心度や資質に求められるべきではなく、それは社会のジェンダー規範や政治構造、さらには選挙制度や地域社会のあり方など多様な要因が作用していると考えられる。 一方スコットランドは、北欧諸国などと比較すると、議会に占める女性の比率は決して高いとはいえないが、1970年代から情勢は確実に変化し、現在の女性地方議員率は約25%である。スコットランドにおける女性議員率の上昇を可能にした要因の一つは、政党内でのクオーター制の導入などの具体的施策であるが、その施策を実現するにはスコットランドおよび英国社会の選挙制度や政治構造、さらには社会的規範と意識の変化や女性のライフコースの変化などが複雑に関わっていると思われる。本研究の中心をなす「スコットランド地方議員調査」において、スコットランド地方議員の実態とジェンダー差の有無および程度とその背景を明らかにし、日本の実態と比較研究した。 研究成果として明らかとなったことは次の5点である。1.スコットランド地方議員のジェンダー差は多くの項目でないか、小さい、2.その結果、日本の地方議員に見られるジェンダー差と比べるとその違いが大きい、3.その背景に、スコットランドと日本における地域政治と地方選挙の制度的・構造的差異が影響している、4.特に地域政治における政党政治のあり方と、選挙制度(小選挙区制か否か)が制度的要因として大きく作用している、5.環境的要因としては、それぞれの社会のジェンダー構造の違いが重要な要因であることが分かった。
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