本研究の目的は、対応バイアスの強度が日米間で異なるかどうかを調べることです。 本研究の基本的な方法は、対応バイアス研究の標準的な研究方法である質問紙法です。ある社会的問題に関して、ある被験者には賛成の文章、別の被験者には反対の文章を読んでもらい、指示によってその文章を書いたとされる執筆者の本当の態度を評定尺度上で推測してもらうという方法です。 本研究の特色は、2つあります。第1は、複数の状況を設定することにより、特定の状況の特性と文化差とが混同されることを防止していることです。第2は、中間回答傾向の統制です。日本人は評定尺度では中間寄りの回答をする傾向があると言われていますが、実際に中間回答傾向が強いとすると、対応バイアスの標準的な測定法では、対応バイアスが弱く出ることになります。本研究では、中間回答傾向を統制することによって、対応バイアスの文化差の有無をより厳密に測定することを目指しています。 本年度は、日米比較調査に使用するための調査用紙の作成を行いました。20種類の調査用紙を作成し、日本の大学において、1147名の被験者に回答してもらいました。その結果にもとづいて、8種類の調査用紙を米国における調査に使用することとし、その英語への翻訳とback translationをおこないました。英語版の調査用紙を米国の共同研究者に送り、倫理委員会の審査に付託しました。3月になって、倫理委員会の承認が下りたので、調査用紙1024部を作成して航空便で米国に郵送し、調査の実施を依頼しました。
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