研究概要 |
本研究の初年度である平成15年度には以下のような調査を行った.日本において文献収集・従来のデータの整理を行うと共に,2003年8月と12月,および2004年3月の3回渡航し,空中写真判読・現地地形調査・トレンチ掘削調査を行った.8月には研究代表者である堤がフィリピン火山地震研究所を訪問し,調査地域の地形図空中写真を購入すると共に,日本の活断層研究の現状や本研究の意義を紹介するセミナーを開催し,共同研究への足がかりを作った.12月には堤と後藤が渡航し,空中写真判読によりルソン島のフィリピン断層系の分布図を作成しその後予察的な現地地形調査を行った.今回の空中写真判読により,断層トレースの位置や上下変位パターンに関して新たな知見が得られた.ルソン島のフィリピン断層系は左雁行配列する4条の活断層から構成されるが,それぞれの活断層に沿って断層の南部では西側隆起,断層の北部では東側隆起という上下変位パターンを示す.このパターンは左横ずれ地震に伴う地表面の上下変位パターンと同じであり,これは個々の活断層がそれぞれ独立の起震断層をなしている可能性を示唆する.また1990年ルソン島地震ではDigdig断層が破壊したが,その破壊開始点が,隣接するGabaldon断層とSan Jose断層との会合部に位置することが判明した.すなわち断層セグメントの境界部付近で破壊が開始したことになる.3月には研究代表者および分担者全員が渡航し,Digdig断層およびSan Jose断層の計2ケ所でトレンチ掘削調査を行った.層序と断層構造から古地震イベントを認定し,イベントの時期決定のために,放射性炭素年代測定試料と火山灰分析用試料を採取した.これらの試料は平成16年度前半に分析する.これまでの成果については,2004年5月の地球惑星科学関連学会合同大会において発表する予定である.
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