本研究では、可搬型18cmサブミリ波望遠鏡をチリ共和国のアタカマ砂漠の高地(標高4800m)に持ち込み、中性炭素原子のサブミリ波輝線(492GHz)の銀河面広域観測を行う。その結果を一酸化炭素分子輝線の分布と比較することにより、銀河系スケールでの分子雲形成を探求することを目的にしている。 昨年度の運用の経験から、可搬型18cmサブミリ波望遠鏡による運用を安全かつ効率的に進めるためにはリモート観測が必要と考えられる。これまで用いていた制御計算機はWindowsベースもものであったが、これではリモート観測に十分耐えられないので、UNIX+VMEの構成に変更した。それに伴うソフトウエアの製作およびハードウエアとのインターフェースの開発を行ない、観測にむけた準備を進めた。 昨年度行った南天の銀河面における中性炭素原子サブミリ波輝線の観測結果を詳しく解析した。その結果、中性炭素原子輝線の分布は一酸化炭素分子の分布と似ているが、中性炭素原子/一酸化炭素分子の存在量比が高まっている領域がいくつかあることがわかった。それらはいずれも渦状腕の上流部分に位置していることが確認された。この結果は、渦状腕に落ち込んでいく希薄なガスが分子雲形成をおこしている姿を捉えたものと理解できる。本研究は、銀河系スケールでの分子雲形成に関するはじめての観測結果として重要な意義があり、小口径サブミリ波望遠鏡による広域観測の重要性を改めて示した。この成果をまとめて、Astrophysical Journalに投稿し、現在印刷中である。
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