平成15年度は、IceCube実験用光電子増倍管の基本性能測定、及び測定結果に基づいた検出器シミュレーションの開発、超高エネルギーニュートリノ・荷電レプトン伝播計算コードの開発、及び南極現地のサイト調査及び試験検出器の設置の4項目を遂行した。 光電子増倍管の基本測定は、南極の極低温化における環境を再現した上で行う必要がある。このため専用のフリーザー内に測定増倍管を置き、ゲイン、ノイズレート、SPE波形を測定するシステムを構築した。その上で出荷前の光電子増倍管、計16本をサンプルし、データ取得を行った。 取得したデータを基に検出器応答を可能な限り正確に取り込んだシミュレーションコードの開発に着手した。今後のデータ解析において検出器シミュレーションコードは本質的役割を果たすため、米国、ドイツの共同実験グループと緊密な連携をとり、光電子増倍管の応答シュミレーションコードの最初のバージョンを書き上げた。 超高エネルギーニュートリノの伝播計算は、IceCubeにおいて、高エネルギー宇宙ニュートリノ探索に不可欠である。特に相互作用、崩壊が連鎖的に発生する超高エネルギー領域では、複雑な数値計算が必要とされる。Java言語を用いて計算コードの開発を行い、数値計算結果を米国物理学会誌Physical Review Dに出版予定である。 南極点におけるサイト調査旅行を12月-1月に行い、試験検出器の設置、及びモニターを行った。南極点の米国基地Amundsen-Scott stationに約1ケ月滞在し、極低温化での検出器の挙動を調べ、光電子増倍管が現地で期待通りの性能を発揮することを確認した。また氷検出器に必要なfreezingコントロールの試験結果から太陽紫外光からの熱吸収の影響が予想よりも多いことがわかり、来年度の本格建設に向け改良点を提案中である。
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