永久凍土は北半球の陸地の約20%を占めており、そこには過去に生成された大量のメタンガスが貯留されている。シベリア及びアラスカの現地観測の結果、永久凍土上層部には平均で約1000ppmのメタンガスが気泡中に存在することを確認した。東シベリア地域で永久凍土中のメタンガス濃度の低い地域が存在するが、そこは最終氷期以降に永久凍土融解履歴によって、既にメタンガスが放出されたためである。永久凍土中のメタンガス濃縮生成には、そこに存在するメタン生成菌による長期継続した生成作用の結果である。レナ川支流のアルダン川河畔マンモス崖において永久凍土中からメタン生成菌の抽出に成功した。実験室での培養結果から、-5℃でもメタン生成する低温適応性があることが確認された。このメタン生成菌の16SrRNA遺伝子分析から、従来報告されていないタイプの新種であることも確認できた。現在の温暖化による永久凍土からのメタンガス放出量について、融解に伴う放出と融解後に形成された湖沼からのメタン生成に分けてフラックスを推定した。融解しつつある永久凍土からは、東シベリアの中央ヤクーチア地域で、年間20万トンであった。また北極海沿岸での永久凍土融解による海岸浸食では年間100万トンに達する。融解後に広範囲に形成されている湖沼でのメタン生成速度は夏季には300mg/m^2・dayであった。5月から8月までの総放出量は約100万トンにも達する。こうした大量のメタンガス放出は、地球温暖化を加速させる懸念が指摘される。
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