シベリアあるいはアラスカの永久凍土地域に存在するメタンガスについてその分布と成因について研究を実施した。ユーラシアと北米に広域に分布する永久凍土とそこに存在するメタンガスが大気に与える影響は知られていなかった。今回の調査研究から、永久凍土中のメタンガス濃度は1万ppmにも達することが判明した。永久凍土中のガス拡散係数は10^<-9>-10^<-10>cm^2/sと小さく、一旦生成貯留されたメタンガスは長期に安定に存在する。より古い時期に形成発達した永久凍土にはより高濃度のメタンガスが貯留されている。実験から-5℃という低温下ではメタン生成速度は小さいが、時間の長さを考慮するなら高濃度に生成されうる。永久凍土中には様々なタイプの微生物が生息していることが確認できた。ペニシリンの新種のカビが中央シベリア永久凍土から検出された。 また凍土中からはメタン生成菌も検出されその同定がなされた。実験室での培養結果から、-5℃でもメタン生成する低温適応性があることが確認された。このメタン生成菌の16SrRNA遺伝子分析から、従来報告されていないタイプの新種であることも確認できた。こうしたメタン生成菌が凍土内に高濃度メタンを貯留したが、その生成条件や速度については未だ解明されていない。永久凍土中に貯留されているメタンの総量は、現在の大気中に存在する総量の数倍に達するものと推定された。永久凍土の大規模融解で地球温暖化が促進される懸念が指摘される。
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