研究課題
基盤研究(B)
地震に伴う電磁気現象の総合的な研究を行ったが、3年間での重要な研究実績の概要を記す。1.日本国内での観測継続とデータ収集・解析日本国内での多くの観測項目のうち重要なものとして、(1)ULF放射と(2)電離層擾乱を取り上げた。先ず関東ULFネットワーク(伊豆、千葉、柿岡、秩父、松代)によるULF放射の多点観測を継続し、良質のデータ取得を継続した。残念なことは、2004年の大地震である新潟中越地震の際100km以内の距離にあった松代でのULF観測がパソコンの不調により欠測であったことである。同様に、国内での7観測点(母子里、調布、千葉館山、清水、春日井、舞鶴、高知)でのVLF観測(電離層擾乱)に関しても、二、三の観測点にて観測不調があったが、それらを整備し、良質の連続データを得ている、特に、2004年紀伊沖地震、新潟地震に対しては明瞭な前兆的電離層擾乱が検出することに成功した。即ち、高知-JJY(福島)パスにて各々の地震の1〜2週間前に電離層擾乱が検出されている。我々が有する多パスでの伝搬異常から電離層擾乱の特性(空間的スケール)をはじめて明らかにしている。更に、2004年スマトラ地震に対してもオーストラリア局の受信から明瞭な電離層擾乱の存在とその空間スケールを明らかにした。以上の事例解析に加えて、国内データに基づいて地震と電離層擾乱との間の因果関係を統計検定し、その有意相関を示すことに成功した。2.イタリア、ギリシャ、台湾でのVLF観測とデータ解析イタリア国バリ大学、ギリシャ国クレタ島でのVLF観測(電離層擾乱)は順調に進み、良質のデータが蓄積されている。他方、台湾国内でのVLF観測は以前の場所が雑音が多いことから新しい場所へ移設し、観測が再開されている。欧州では他の地上観測(地電流、ULF放射、地球化学諸量)との連携をスタートしている。イタリアでのVLF受信より、地震に伴う電離層擾乱を多数検出した。3.地圏・大気圏・電離圏結合の解明1にて述べた様に地震に伴う電離層擾乱の存在はほぼ確立したが、その結合機構は未解明である。我々は大気重力波の重要性を指摘しているが、更なる研究が不可欠である。2004年6月に打ち上げられた仏国DEMETER衛星上での波動、プラズマ等の物理量の観測と我々の日本国内での密度の高い地上観測との連携がスタートしている。これは地圏・大気圏・電離圏結合機構の解明に大きく貢献する可能性がある。一例として、新潟地震とスマトラ地震に伴う地上と衛星データとの比較を取り挙げている。電離層擾乱観測、電波観測と衛星上でのプラズマ、波動観測との比較を開始している。
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