研究課題
基盤研究(B)
2004年9月23日〜11月10日南太平洋ラウ海盆およびハブル海盆で「しんかい6500」による潜航調査で得られた生物標本について主に形態・生態・生物地理・分子生物学的研究を行った。本研究ではラウ海盆およびハブル海盆だけでなく、歴史的に我々自身が調査してきた太平洋・インド洋・大西洋の深海熱水・冷湧水噴出孔周辺に生息する生物群集を用いて、それら群集の系統的・地理的分散の起源を明らかにする目的で研究を行った。その結果次のようなことが明らかになった。各生物分類グループの科以上の分類群の多様性を見た時、研究対象とした軟体動物二枚貝類、巻貝類、節足動物甲殻類、環形動物多毛類、ハオリムシ類などで、南西太平洋は他の深海熱水・冷湧水噴出孔と比べて多様性が高いことが分かった。特に甲殻類の蔓脚類は世界で唯一、全4亜目の分類群がラウ海盆に知られ、次いで西太平洋に3亜目が知られた。形態的解析から最も原始的な形態を持つと評価された分類群がラウ海盆、ハブル海盆に見出された。特に蔓脚類のミョウガガイ類4属のうち、ハブル海盆周辺で採集されたAshinkailepas属が知られる限り最も原始的な形態を保持すると共に最も広い分布域(南西太平洋から北西太平洋)をもつ。分子系統学的な解析から、シンカイヒバリガイ、巻貝類、蔓脚類、ハオリムシ類は、知られる限り南半球に生息する分類群が系統的に原始的な位置に来ることが明らかになった。特に蔓脚類とシンカイヒバリガイ類は深海熱水・冷湧水噴出孔生物群集の系統的および地理的分散の起源が南西太平洋となることが明かになった。この結論は、形態や生物多様性から見た系統や分散の起源として推定される南西または南太平洋起源と良い一致を示した。
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