研究分担者 |
前島 渉 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20173700)
奥平 敬元 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20295679)
三田村 宗樹 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00183632)
千葉 仁 岡山大学, 個体地球研究センター, 教授 (30144736)
中屋 眞司 信州大学, 工学部, 助教授 (70313830)
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研究概要 |
本研究は,世界最大のヒ素汚染地下水出現地であるベンガルデルタのヒ素溶出過程を明らかにするために,沖積層と洪積層の2つの深度で帯水層が見られる地域での掘削を中心に計画した。本年度はこの掘削地点を選定するための予備調査に当てられた。 現地共同枡究者であるダッカ大学のDr.Kazi Matin Ahmedの助言を受けて,ダッカの南東約30kmにあるジョナルガオを調査対象地域とした。2km×2km地域で230あまりの民家の井戸から雨季(9〜10月)と乾季(2〜3月)の2度,地下水を採取した。雨季には,酸化還元電位(-30~+20mVが多い)が低い地下水から数百〜2000ppmの亜ヒ酸が検出された。また,亜ヒ酸濃度の高い試料はアンモニウム濃度が高かった。酸素の同位体比は-2~-8‰(SMOW)であったが,亜ヒ酸濃度が高い地下水の酸素同位体比は-3~-4‰に集中していだた。乾季の試料は現在分析中で詳しいことはわからないが,亜ヒ酸は還元的な地下水ほど高濃度であることが期待されるので,乾季は雨季よりも亜ヒ酸濃度の変動が大きいと予想される。これらのことから,堆積物から地下水中へのヒ素の溶出は雨季から乾季への移行期に活発になると考えられる。 また,雨季の調査では板たたき法による地震波探査,乾季には電気探査を行い,沖積層と洪積層の境界の深度を推定した。調査地域西側から東側に向かって境界は深くなり,亜ヒ酸濃度が高い地域が集中する旧ブラマプトラ川の東側氾濫原にあたる地域では60~70mと推定された。 2度の調査の結果と,掘削装置の搬入経路などを考慮し,最も高濃度のヒ素汚染が見られる2つの集落で2004年11〜12月にかけて掘削を行うこととし,地元住民と掘削業者との折衝を行った。
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