研究分担者 |
奥平 敬元 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20295679)
前島 渉 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20173700)
赤井 純二 新潟大学, 理学部, 教授 (30101059)
千葉 仁 岡山大学, 理学部, 教授 (30144736)
中屋 眞司 信州大学, 工学部, 助教授 (70313830)
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研究概要 |
バングラデシュにおける沖積平野では,ヒ素含有地下水が広く分布している.今年度は,この形成メカニズム解明のため,ショナルガオ北部のファテプール・ダリカンディでのコアボーリングとその周辺地域での7本のパーカッション式掘削調査によって,この地域の帯水層構造の把握とその特性について検討した. 掘削調査の結果,以下のような帯水層構造が明らかとなった.沖積平野の表層部には青灰色の細-中粒砂が20〜50mの厚さで広く分布し,完新統に対比され,河川環境で形成された堆積物とみられる.また,この砂層には黒雲母を多く含んでいる.その下位には,灰色の粘土-シルト層が4〜20mの厚さで地表下24〜45m深の間に広く分布している.この粘土層中には藍鉄鉱や植物片が含まれていて,淡水域の還元的な湖あるいは沼に堆積した地層であるとみられる.これらの完新統の下位には茶褐色の砂と灰色の粘土-シルトの互層が広く存在する.調査地域の西部に位置する台地部にはこの互層が直接露出している.砂層の赤色度は最上部で最も強く,下位へ向けて徐々に弱くなる.従って,この赤色化は,最終氷期に浸食された旧地表面からの表層風化によるものとみられる.帯水層構造としては,最上部帯水層として完新統の細-中粒砂層が位置づけられ,還元環境下にある.下部帯水層とこの最上部帯水層は厚さ約10mの淡水成粘土層によって明確に区分される.下部帯水層は更新統の粗-中粒砂層から構成され,酸化環境下にある.この砂層が調査地域西部の台地に直接露出することから,下部帯水層の地下水は天水の涵養を台地側から直接受ける状況にある.この帯水層構造はヒ素含有地下水の形成に地質的背景として寄与しているものとみられる.
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