研究概要 |
2003-2004年度バングラデシュ・ショナルガオ地域で地下水採取調査およびボーリングによる地層試料採取を行い,本年度は続けて水質分析,地層中のヒ素濃度分析を進めた.その結果,調査地域の帯水層構造としては,約30m深までは完新統の細粒〜中粒砂層を主とする不圧地下水帯水層,その下位30〜40m深は粘土層,40m深以下は中粒〜粗粒砂層から構成され40m以深が被圧帯水層である.完新統の不圧帯水層は,還元的であり,20m深前後の井戸の地下水中のヒ素濃度は数10〜数100ppbと高い.中部の粘土層は,藍鉄鉱を含むことから,還元環境下で堆積した淡水成層である.粘土層からの3試料の^<14>C年代はいずれも50kaを上回り,後期更新世以前の堆積物となる.40m深以下の砂層最上部は褐色を呈し,強い酸化を受けている.それは下位に向けて弱くなること,砂礫層上面は浸食した谷地形呈することから,強いラテライト化作用を被った地層であると判った.この被圧帯水層の地下水は酸化的で,ヒ素を含まない.上部の不圧帯水層にはNH_4イオンがヒ素濃度と正の相関を持つ.その窒素同位体比は周辺地域で使用されている窒素肥料のそれと同様の値を示していることから,施肥過多の傾向も還元環境を助長する要因とみられる.調査地域の地下帯水層構造を明らかにするため,簡易ボーリング掘削を3地点で行った.この現地調査によって,調査地域の地層分布が明確になってきている.さらに,昨年度掘削し,帯水層毎に設置した観測井戸を用いて,揚水試験を実施した.その結果,上部帯水層は7.4×10^<-3>〜2.6×10^<-2>(cm/sec),下部帯水層は1.6×10^<-2>(cm/sec)の透水性を持つことが明らかとなった.また,調査地域内の表層土壌試料の採取を数地点で実施した.
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