室内実験として、arsRとluxオペロンを連結した発光型ヒ素センサーの結果では5価ヒ素より3価ヒ素の方が早く最大発光強度が現れ、微生物によって形態別の分析ができる可能性がみられた。これには細胞からヒ素を排除するのに関係しているarsBが5価ヒ素より3価ヒ素の形態別測定にも影響していると考えられた。一方、継続研究である細胞表層工学によるヒ素除去実験では、昨年度の構築でlamB遺伝子に変異がみつかり、これを修復して大腸菌でヒ素除去を可能にする遺伝子組換え体を再構築した。 地下水流動解析として、MODFLOWをベースに地下水中の物軍濃度有シミュレートするプログラムMOC3Dを用いて現場に適用するためのモデル式を準備した。 また、バングラディシュでの現場測定に先立って、以前より研究打ち合わせを行っている宮崎大学とともに簡易ヒ素測定装置、また溶出機構に伴う化学式の検討を行った。 バングラディシュでの調査は、冬休みの期間を利用して実施した。調査はクシュティア州で行った。調査には東北大学の大学院生、現地共同研究者になっているDr.Wahiduzzmanとダッカ大学研究員が随行した。調査は、ゴーライ河の左岸で緯度経度を確かめながら24地点での測定を試みた。測定項目は地下水面水位、pH、水温、溶存酸素、電気伝導度(塩分を含む)、ヒ素濃度等である。ほとんどの井戸は極度の嫌気状態にあり、硫化水素臭のする井戸も見受けられた。また、ヒ素の形成時期は1万年から現在までの地質形成段階である完新世で生じたことが明らかになった。 ダッカに戻ってからは現地共同研究者の所属するInstitute of Water Modellingに出向き、今後の協力を依頼した。 年末に帰国し、現地で測定したデータの整理、また現地共同研究者が送ってくれた水位データの解析を行い、その結果は土木学会東北支部で発表した。 その後、現地共同研究員らは、もっとも水位が下がる3月中旬にも現場調査を行っている。 また、ダッカ大学の研究員は本学においてヒ素溶出機構を本格的に調査すべく、目下手続きを急いでいる。
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