昨年に引き続くバングラディシュの現地調査は、ガンジス河、ゴーライ河、ベンガル湾に囲まれた地域を対象にし、共同研究者のDr.Wahiduzzmanから降雨、蒸散量、河川水位、観測井戸等の情報を入手した。これらのデータはMODFLOWを用いて地下水流動解析を行った。また、ヒ素濃度は、ゴーライ河に沿う10村、約30本の井戸水を対象に水温、DO、電気伝導度、酸化還元電位(ORP)とともに測定した。その結果、ヒ素は還元状態(III価)にある場合が多く、完新世帯水層で溶出や吸着が生じるのは地下水面が変動する上部だけでその下は平衡に達していることがわかった。これら結果は、ホンコンでの国際学会や水工学論文集に発表した。 一方、ヒ素を生物学的に吸着させる細胞表層工学について検討した。大腸菌の細胞表層の最外層を構築するLamBタンパク質にヒ素を吸着させ得るArsRリプレッサータンパク質を導入した。今年度はE.coliK12arsopeを用い、ArsRが正常にインサートされていることを確認した後、制限酵素を用いてpUC119/SmaI/BamHIベクターとライゲーションし、K12arsope+pUC119プラスミドを構築した。次年度はヒ素を吸着除去するか否かの実験を試みる段階にある。さらに、ヒ素の溶出実験を試みた。実験はヒ素含有汚泥を窒素ガスでORPを還元状態に調整し、溶出に係わりの強い酸化水酸化鉄、HCO_3^-、有機物等の要因を変化させた。次年度は要因の挙動をさらに吟味し、溶出速度の算定を図る予定である。
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