研究概要 |
本研究の目的は、我国の方式と欧米の方式による地盤調査を行い,両者の地盤調査方法の相違と共通性を明確に把握し,我が国の地盤調査技術の国際的な位置づけを明らかにすることにあった。 文化遺跡の地盤調査における技術的・社会的な要求は3つ考えられる。第一に、長い将来に亘って対象物をできる限り古代のあるべき姿のまま保守し、その安全性を確保するという共通の使命がある。つまり、考慮すべき時間のスパンが圧倒的に長く、保守・保全効果の持続性が要求される。第二に、人類の貴重な財産であるから、周辺環境を乱すことは極力避けねばならず、また地盤調査そのものが観光客の邪魔になってはいけない。つまり、環境面での制約が多い。第三に、調査の対象となる地盤物性そのもの、ましてやその変化の領域が不特定である場合が多い。 当該研究では、第二および第三の制約をクリアーする調査法として、「環境・地盤にやさしくて広領域の調査が可能な非破壊型探査」の一種であり、広範囲における地盤内のせん断弾性波(S波)速度(Vs)の分布が迅速に得られる表面波探査法の工学的有用性を検証した。弾性せん断波速度測定により、弾性波動理論を適用して10^<-6>程度の微小ひずみにおけるせん断弾性剛性率G(=ρVs^2、ρ:地盤の密度)の地盤内分布を明らかにし、これにより、基礎地盤の沈下の将来予測に必要な弾性変形定数の地盤内分布を得ることができた。さらに、Gの測定から地盤の強度を推定し、基礎地盤の支持力の推定にも役立てられる可能性を提言した。 一連の研究成果を地盤工学研究分野の学術誌に公表するとともに、2004年9月にポルトガルポルト市で開催された国際地盤工学会主催の「原位置試験による地盤の特性化に関する第2回国際会議」において、キーノート報告にまとめ基調講演を行った。この成果は、国際地盤工学会主導で進展を図りつつある地盤調査技術基準の国際化の今後に、主導的な役割を果たすことが期待される。
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