本研究では抽水植物のモデルに必要な観測データの収集が日的である。当初、代表的な抽水植物である、ヨシ、ガマを対象としていたが、これらの種に関しては、比較的大量のデータが得られたので、研究の目標をさらに高めて、抽水植物に沈水植物も含めた一般的なモデリングを目指したものとした。これにあわせて、観測場所を、より気象条件の厳しいオーストラリアに限り、当初対象とした植物の特性をより、顕著に備えた、固有種であるJuncus ingens、Eleocharis sphacerata、Baumea arthrophyllaの3種の抽水植物ならびに沈水植物であるCharopytesの観測を中心に、それにコガマを加え、生長観測を行った。観測はより精度を上げるために、当初の予定より高い頻度で行った。本年度に得られた結果は以下のようなものである。 3種の抽水植物のうちで、E.sphacerataは極めて密で大きい地下茎を有し、B.arthrophyllaは地下茎はそれほど大きくないものの、大量の根を有する。J.ingensは根、地下茎とも小さい。その結果、E.sphacerataは地下茎に養分を蓄え越冬し、初春にはこれを利用して初期の葉茎を生長させる。B.arthrophyllaは、根を地下茎代わりに利用し、この養分で初春の葉茎を生長させると考えられる。J.ingensはこうした組織が存在しない。しかし、その代わりに、冬季も地上部が枯れず、光合成を継続させていると考えられる。わが国のヨシやガマ、マコモはこれらの中間に位置づけれると考えられ、こうした植物を一般的に扱うモデル開発によってより一般的な取り扱いが可能となる。 また、Charophytesの観測では、自己の生産する土壌との関係が明らかとなり、今後より新しい展開が期待される。
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