研究概要 |
本研究は,住宅の市場化が急速に進む中国の主要都市を対象に,住宅に関する法制度の変化を取材・分析するとともに,私有化された住宅について実態調査を行うことにより,制度転換に伴う住宅供給と住環境の問題を検討することを目的としている。平成15年度には,中国における住宅政策の転換と供給実態を分析するとともに,地方中核都市である大連市をフィールドに商品住宅の現地調査を行い,その供給のプロセスと居住実態を明らかにしている。 平成16年度には,以下の調査・分析を行った。 (1)大連市の都市計画における住宅開発の位置付けの分析:大連市の都市計画および開発状況に関する資料を収集・分析することにより,近年の住宅開発の地理的分布と,その都市計画上の位置付けについて考察を行った。土地がすべて国家所有である都市部においては,市政府の強いコントロール下で計画的に開発が進められてきたことが明らかとなった。 (2)大連市における商品住宅の開発動向の把握:住宅タイプ・対象購買層・立地・デザイン等がそれぞれ異なる複数の商品住宅を選定し,現地調査を行った。調査では,開発・管理会社に対してヒアリングを行うとともに,そのデザインの特徴と住環境管理の現状について観察調査を実施した。大連市においては,特に1990年代後半以降に市場化の進展に伴い商品としてのタイプが多様化し,デザインも装飾化している実態が明らかとなった。 (3)商品住宅の居住状況の実態把握:大連市において複数の商品住宅の住戸を選定し,居住者へのヒアリングと住戸の実測調査を行った。 以上の調査・分析を踏まえ,1)「房地産」制度の変遷と現状,2)住宅地と商品住宅市場,3)大連の都市構造と商品住宅,4)商品住宅のデザイン,5)商品住宅の管理運営,6)スケルトン型住宅供給の普及,7)中国現代住宅の室内空間,8)中国の商品住宅と都市家族,の各視点から成果をまとめた。
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