海藻は新しい遺伝子資源として非常に魅力的であるが、技術的な困難さから今まであまり生化学的研究は手掛けられてこなかった。そこで、本研究の一つの目的は、日本およびヨーロッパで採集される海藻から新規酵素を見出すことにある。さらに、すでに当研究室とイギリスエクセター大学との間で共同研究を行ってきている、海藻サンゴモ科Corallina pilulifera由来のハロペルオキシダーゼの構造機能相関を解明することをもう一つの目的とする。 まず、2003年春に鳥取県沿岸においてさまざまな種類の海藻を採集した。また、同年夏にはオランダの海岸においてAscophyllun nodosumをはじめとするヨーロッパ特有の海藻を採集し、それぞれ細胞を破砕して粗酵素液を調製した。オランダで採集した海藻については共同研究者が所属するアムステルダム大学にて細胞破砕を実施した。それぞれの粗酵素溶液を用いて当研究室において、各種アミノ酸やヌクレオシドを基質にした酵素活性やハロゲン化酵素活性(ハロペルオキシダーゼ活性)を測定したところ、いくつかの海藻において基質を他の化合物へ変換する酵素活性および、ハロペルオキシダーゼ活性が認められた。 C. pilulifera由来のハロペルオキシダーゼの立体構造に関しては、野生型酵素についてはエクセター大学との共同研究によりすでに解析が完了している。そして最近、当研究室で遺伝子工学的手法を用いて、一つのアミノ酸を他のアミノ酸へ置換することにより、本酵素の基質特異性を改変することができた。そこで、変異型酵素を精製、結晶化してX線解析を行い、野生型酵素の構造に関する知見を基に変異型酵素の立体構造についても解析を実施した。
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