研究概要 |
海藻は新しい遺伝子資源として非常に魅力的であるが、技術的な困難さから今まであまり生化学的研究は手掛けられてこなかった。そこで、本研究の一つの目的は、日本およびヨーロッパで採集される海藻から新規酵素を見出すことにある。さらに、すでに当研究室とイギリス エクセター大学との間で共同研究を行ってきている、海藻サンゴモ科Corallina pilulifera由来のブロモペルオキシダーゼ(BPO)の構造機能相関を解明することをもう一つの目的とした。 まず、2003年および2004年に鳥取県沿岸において、2003年はオランダの海岸において、2004年にはイギリス海岸においてさまざまな種類の海藻を採集した。これらの海藻の無細胞抽出液を用いて各種化合物を基質にした酵素活性を測定したところ、いくつかの海藻において基質を他の化合物へ変換する酵素活性が認められた。特に高いphosphatase活性が見出された海藻があった。無細胞抽出液を用いて酵素の性質検討を行ったところ、至適pHは8付近、至適温度は60-70℃であり、60℃で30分処理後も60%、pH3.5-9.0では80%の活性を保持していた。さらにp-nitrophenylphosphateに対する活性を100%とした場合、フルクトース1,6-リン酸、グルコース6-リン酸、グリセルアルデヒド3-リン酸に対しては、それぞれ53%、19%、16%の酵素活性を示した。 一方、Corallina piluliferaのBPOの耐熱性および有機溶媒耐性の要因について検討を行った結果、ホロ型BPOはエタノールやアセトンだけでなくテトラヒドロフランやアセトニトリル存在下でも活性を保持していたが、アポ型BPOの溶媒耐性はアセトンに対してのみ認められた。レゾルシノール誘導体を基質としたBPOおよび変異型BPOを用いたハロゲン化反応を行ったところ、速やかな転換反応が進行し、NMR分析からブロモ化反応が起こっていることが明らかになった。 X線構造解析から見つかったCaと本酵素の補欠分子族であるバナジン酸VO_4^<3+>の存在がこれらの耐熱性および有機溶媒耐性特異な性質の要因になっていることを突き止めた。
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