中央アラスカタイガ地帯において、トウヒの個葉および、コケ類、地衣類の構成要素の分光測定を行い、それらを基にして、林床は線形混合モデルを、タイガ林冠は媒体モデルを仮定して、モデル計算を行い、衛星データと地上要素との対応を得た。林冠のバイオマスのパラメータとしては葉面積指数を用いた。この対応関係と土壌呼吸測定同期観測と文献による林冠および林床のコケ類、地衣類の炭素収支の知見とを用いて、炭酸ガス収支量を表す純生態系生産量(NEP)の地理的分布の算出方法を提示した。アラスカ中央部タイガ地帯はトウヒ(Picea Mariana)とシラカンバ(Betula Papyrifera)が優先する。トウヒ林の林床植生(ミズゴケ、フェザーモス、ライケン(地衣類))の遺いにより純一次生産量(NPP)が大きく異なるという観測結果が示されているが、これまでの衛星による炭素収支の見積もりでは、林床植生の影響は考慮されなかった。また土壌呼吸量についてもほとんど考慮されなかった。本研究では、構成要素の分光測定結果と林床の線形混合モデルと林冠の媒体モデルを用いて、衛星データから林床と林冠の情報を分離して、地上での生態系物質収支観測と衛星データとをリンクさせる方式を提案し、アラスカ中央部タイガ地帯のランドサットETM+画像に適用し、炭酸ガス収支量の地理的分布を見積もった。この結果、この地帯のトウヒ林の年間炭素収支は51gC/m^2/yrの吸収であったと見積もられた。
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