研究概要 |
調査対象の寒・温・熱帯湖のうち本年度は熱帯のマラウィ湖と温帯の琵琶湖を対象に,その沿岸帯(水深1〜10m)の底生生物群集において,付着藻類等の生産者に依存した生食連鎖群と生物遺骸等に依存した腐食連鎖群の量的比較を行った。まずマラウィ湖での調査研究の準備のために2004年7月に2名が調査地へ赴き,マラウィ大学の共同研究者と打ち合わせ等を行った。次いで,現地での乾期2004年9月,および雨期の2005年1〜2月にマラウィ湖沿岸部礫帯において日本人研究者とマラウィ大学研究者数名のチームにより潜水調査を行った。一方,琵琶湖での調査は北湖礫帯において高温期の2004年9月に行った。いずれの湖においても,付着藻類等生産者の生産速度や呼吸速度の測定は明暗ビン法により行い,あわせて生産者の現存量,生物遺骸等のデトリタス量,および底生動物の種組成・現存量の測定を行った。さらに主な種群を対象に,底生動物の消化管内容物の検鏡分析および消化管内容物中に含まれるクロロフィル量の測定を行った。その結果,この前年に調査したバイカル湖での結果と比べ,バイカル湖,琵琶湖,マラウィ湖沿岸帯の付着藻類のクロロフィル当たりの生産力にはそれほど差がないものの,クロロフィル現存量は琵琶湖の場合ではバイカル湖の約2倍,マラウィ湖の場合では数倍も多く,また酸素ベースでの単位時間あたりの付着藻類の生産力は,琵琶湖はバイカル湖の約3倍,マラウイ湖では10倍近い差を認めた。
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