研究課題/領域番号 |
15405012
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中坪 孝之 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (10198137)
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研究分担者 |
神田 啓史 国立極地研究所, 北極観測センター, 教授 (70099935)
小泉 博 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (50303516)
大塚 俊之 茨城大学, 理学部, 助教授 (90272351)
内田 雅己 国立極地研究所, 研究教育系, 助手 (70370096)
村岡 裕由 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 助教授 (20397318)
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キーワード | 高緯度北極 / 炭素循環 / 氷河後退域 / 生態系純生産量 / 土壌呼吸 / 微生物バイオマス / リン脂質脂肪酸 / 遷移 |
研究概要 |
現地の春から夏に相当する6月下旬から8月中旬にかけて、3名(中坪、小泉と研究協力者1名)が高緯度北極スバールバールに滞在し、調査を行った。主な成果は以下のとおりである。 1.土壌からのCO_2放出量を広域にわたって推定するために、氷河末端域の遷移初期段階から、遷移後期の植生が発達した場所にいたる様々な植生発達段階において、土壌呼吸速度を測定した。土壌呼吸速度は、氷河末端域付近では常に小さな値を示したが、遷移後期では有機物層の厚さにより大きく異なり、植生の発達している場所でも有機物層の薄い地点では氷河末端域と同程度の土壌呼吸速度であった。以上から、土壌呼吸速度を広域に評価する際には、氷河の後退時期よりも、各地点における植生の発達段階や土壌有機物量を考慮する必要のあることが明らかとなった。 2.低温期間における雪面からのCO_2放出の可能性を検討するために、調査地に優占する3種の植物のリターを凍結状態のまま積雪下より採取し、密閉法により、低温域(-13℃〜+5℃)におけるCO_2放出速度の測定を行った。CO_2放出は、-13℃の凍結状態下においても僅かではあるが検出され、温度の上昇にともなって増加したが、温度依存性はリターの種類によって異なった。以上から、氷点下の温度域においても、温度の変化はリターからのCO_2放出速度に影響を与え、リターの種類もCO_2放出を規定する要因であることが明らかとなった。 3.土壌微生物のバイオマスと呼吸活性の制限要因を検討するため、現地で採取した土壌に炭素源、窒素源を添加し、その影響を検討した。リン脂質脂肪酸分析によって解析したバイオマスおよび群集構造は、炭素源、窒素源の添加を行っても大きな変化は認められなかったが、呼吸活性は炭素、窒素の同時添加によって顕著な増加が認められ、炭素、窒素源不足が土壌微生物の呼吸活性を制限していることが示唆された。
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