研究概要 |
本課題では日華植物区系に広域分布をする植物種を対象にして、地域集団間の系統関係を分子系統学的に解析するとともに,化石の年代や地理的分布,現生種との比較形態を併せて,日華植物区系に広域に分布を拡げることになった植物の起源と分布域拡大の過程について解明することを目的に進めた。タデ科ギシギシ属のキブネダイオウ(Rumex nepalensis)とドクダミ科ドクダミ(Houttuynia cordata)の採集と解析に集中して進めた。その結果、この2種の植物で共通して、中国雲南省西部を境にして東西に種内の葉緑体DNAハプロタイプが分かれることが判明した。この雲南省西部地域は、メコン川、サルウィン川、チャン川(長江あるいは揚子江)の3つの大河上流が、狭い範囲内に南北に3本が平行に流れるエリアである。この地形は明らかに第三紀のヒマラヤ山脈の隆起によって形成されたものであり、東アジア日華植物区系に広域分布する植物が、ヒマラヤ山脈の隆起によって分断を受けたことを意味していると我々は考えている。これはこれまでに全く想定されてこなかった知見であり、今後においてはこの知見に焦点をあてて、これら3河川の西側地域についてもサンプリングを拡げたいと考えている。 なお、本研究のカウンターパートの一つである中国科学院昆明植物学研究所でも本研究課題のテーマに合わせてバラ科シモツケ属シモツケ(Spiraea Japonica)について解析を進めた。また、共同でブナ科Cyclobalanopsis属アラカシ(C.glauca)についてもサンプリングを行った。これについては今後に更なるサンプリングとDNA解析を進める計画である。また,他にも広域に分布域を持つ植物としてソテツ属植物とツガザクラについて分子系等地理の研究をまとめた。化石についての研究では,メタセコイアについて解析を進めた。
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