研究概要 |
熱帯雨林において人類は野生食物資源だけで生存可能かという問題を検証するためカメルーン南部の乾季の熱帯雨林において農作物に依存しない純粋な採捕生活実験を試みた。実験は8月17日から9月5日まで20日間,当地の狩猟採集民バカの6夫婦を被験者として実施した。調査項目は,体重,血圧,運動量など被験者の生理学的側面,採捕食物の同定と重量測定など栄養学的側面,加速時計や追跡観察による生計活動の行動学的側面であった。被験者およびその家族は健康面に異常もなく無事に実験期間を終えることができ,乾季の20日間と条件は限られるが,熱帯雨林における純粋な狩猟採集生活の可能性が否定されはしなかった。しかし,被験者に身体的,心理的な負荷はあったか,なかったか,もっと長期ならどうであったかなどについて,詳細な検討が必要であるが,現在,資料の整理中である。また,どれほどの時間・空間を活動したのか,という行動学的側面,どんな食物をどれほどの量を採捕したかなど栄養学的側面も早期にまとめたいと考えている。また,生理学的側面については次年度におこなうエネルギー消費に関する生理学的調査結果を待って,まとめるつもりである。2003年12月には,同地域において採捕生活キャンプ地の分布に関する広域調査,およびヤマノイモの高密度分布地域おけるキャンプ跡地の表面観察調査を実施した。この調査では土器片などの生活遺物も発見され,現在,資料の分析中である。
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