研究概要 |
本研究の目的は,カメルーン南部のピグミー系狩猟採集民バカの行動観察調査を通して人類の生息環境としての熱帯雨林を進化的観点から評価することである。本年度は,15年度に実施した熱帯雨林内における狩猟採集生活実験の被験者家族6家族を含む10家族を対象として,畑のある定住集落における日常生活についての観察調査をおこなった。調査期間は,8.月15日から9月4日までの20日間。調査項目は,前年度同様,入手した食物の種類と量などの栄養学的項目,被験者の体重,血圧変動など健康・身体形質的項目,さらにライフコーダー(加速度計)による消費エネルギーの計測など行動学的項目であった。この調査では,定住集落ではエネルギー源食物としてリョウリバナナとキャッサバの2種類の作物がきわめて重要であること,一方,森の生活ではかなりの収穫量が期待されるタンパク源としての野生獣肉,魚介類が定住村では非常に乏しいこと,活動が全般に不活発でエネルギー消費が小さそうであることが観察された。しかし,詳細な結果は未整理である。本年度の結果は,前年度におこなった乾季,および次年度の雨季に予定している森林内のキャンプ生活におけるそれらと比較検討され,熱帯雨林におけるキャンプ生活と,定住村における生活とでは,食生活,活動の質と量においてどのような差異があるか,その差異の要因は何か,現在の狩猟採集民にとって森のキャンプ生活はどのような意味があるのか等を明らかにし,熱帯雨林の人類の生息環境としての可能性を検討する予定である。また,7月27日から8月13日の18日間,エネルギー消費量を推定するために不可欠な資料として基礎代謝量や各種活動の単位時間あたりのエネルギー消費量を延べ60名のバカ人を対象にダグラスバッグ等を使用して計測した。これも現在整理中である。また,12月から3月にかけて,乾季の森林内キャンプ生活における河川の重要性を鑑み,漁労活動,魚介類に注目した行動学的調査を実施した。
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