動物遺存体分析による西アジアのNeolithization(新石器化)過程の解明:家畜化の進行と遊牧の発生

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15405017
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 本郷 一美 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (20303919)
• 研究分担者: 南 真木人 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (40239314) ; 三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749) ; 藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 教授 (90238527)
• キーワード: 動物考古学 / 新石器時代 / 南東トルコ / ヨルダン南部 / 初期遊牧民 / チャヨヌ遺跡 / サラット・ジャーミー・テペ / ジャバル・ジュハイラ

研究概要

西アジアにおける家畜飼育の開始と牧畜文化の発達過程を解明する目的で、トルコ南東部、ヨルダン南部で調査をおこなった。また、トルコ北東部山岳地帯の夏営地における家畜の移牧と乳製品加工に関する聞き取り調査を行った。
トルコ南東部の先土器新石器時代の遺跡であるチャヨヌ遺跡から出土した動物遺存体の分析を継続した。また、トルコ南東部のウルスダム建設予定地域にある新石器時代のサラット・ジャーミー・テペ(Salat Cami Tepe)遺跡で地形測量と表面調査を実施した。村の拡張により遺跡の破壊が進んでいるが、遺跡の原地形を明らかにすることができ、土器新石器時代の遺跡であることが確かめられた。
ヨルダンでの調査は発掘調査の対象に予定しているヨルダン南部ジャフル盆地の先土器新石器文化遺跡、ジャバル・ジュハイラ(Jabal Juhayra)、の地形測量を実施した。その結果、この遺跡がワディの南側斜面に広がる小規模(約0.5ha)な集落遺跡であることが判明した。また、これと平行して実施した分布調査では、ジャバル・ジュハイラの東約2kmの地点で、後期新石器文化の葬祭遺跡ハッラ・アル・ジュハイラ(Harra al-Juhayra)を確認し、同じく地形測量を行った。この二つの遺跡は、ジャフル盆地における定農定牧生活の最末期と遊牧の最初期をそれぞれ示していると考えられる。だとすれば、この二つの遺跡を調査することによって、ジャフル盆地における遊牧の発生を具体的に追尾することができる。
本年度のトルコ南東部およびヨルダンでの野外調査は本調査に先立つ事前準備であるが、上記の見通しを得た点で大きな成果があった。
トルコ北東部山岳地帯では東黒海山脈南斜面8カ所、黒海側斜面5カ所の夏営地を訪ね、立地、標高、滞在期間、家畜の数などの聞き取りを行った。

研究成果

• [文献書誌] Hongo, H., Meadow, T.H., Oksuz, B., Ilgezdi, G.: "Sheep and goat remains from Cayonu Tepesi, Southeastern Anatolia"Archaeozoology of the Near East. VI(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Hongo, H., Meadow, R.H., Oksuz, B., Ilgezdi, G.: "Animal Exploitation at Cayonu Tepesi, Southeastern Anatolia"TUBA-R. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 藤井純夫: "アジア新石器文化の防風壁・防風策"西アジア考古学. 5. 47-66 (2003)
• [文献書誌] Fujii, S.: "Qa' Abu Tulayha West, 2002 : An Interim Report of the sixth and Final Season"Annal of the Department of Antiquities of Jordan. 47(印刷中). (2003)
• [文献書誌] 藤井純夫: "ヒツジ遊牧の成立と展開"第11回西アジア発掘調査報告会報告集. 23-32 (2004)
• [文献書誌] 安倍雅史, 藤井純夫: "ヨルダン,ジャフル盆地の踏査-タビュラー・スクレイパー生産の二戦略"第11回西アジア発掘調査報告会報告集. 18-22 (2004)
• [文献書誌] 三宅 裕: "ティグリス川流域ウルス・ダム水没地域における考古学調査(2003年)"第11回西アジア発掘調査報告会報告集. 12-17 (2004)