研究課題
文化的に中国広西地域に対比され、しかも地理的にも隣接するベトナム北部に注目し、新石器時代末(約3800年前フングエン文化平行期)のMan Bac遺跡の発掘調査をおこなった。36平米のグリッドを2mの深さまで掘り下げ、35基の墓を発見した。いずれも保存状態の良い人骨が埋葬されており、形態小変異の出現頻度、死亡年齢、性別、幼児死亡率などの集団構成の解明、あるいは齲歯やエナメル質減形成をはじめとする古病理学的研究においても必要となる十分な個体数の人骨が得られるにいたった。出土した人骨の形態を観察した結果、後期更新世から完新世初頭のホアビン文化期の人々の子孫と思われるタイプと、より平坦で高い顔面形態をもつ新たな移住者集団の一員とみられるタイプの人骨が混在していることが確かめられた。東南アジア人の起源論において主張されている中国南部からの農耕集団の拡散モデルを実証するための貴重な資料である。文化遺物としては多数の土器が副葬されており、中国南部との関係を追求するための豊富な資料が得られた。また、家畜の問題を検討するうえ必要となるイノシシをはじめとする動物骨も多数採取した。でた。次年度にはこれらの人骨からの計測データなどの採取、土器の比較分析、動物骨の同定をおこなう予定である。またAMS年代測定、ミトコンドリアDNA分析および安定同位体による食性分析のための歯のサンプリングを実施し、日本に持ち帰った。一方、さらに南のカンボジアからは初期鉄器時代のPham Snay遺跡出土の人骨約80体分の形態学的データを採取した。この遺跡の人骨はベトナムのMan Bac遺跡よりも新しい時期に属するにもかかわらず、中国南部からの遺伝的影響を示唆する形質は希薄であることがわかった。
すべて 2005 2004 その他
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
American Journal of Physical Anthropology (Online)
ページ: 10.1002/ajpa.20067 DOI
American Journal of Physical Anthropology (発表予定)
Anthropological Science (発表予定)
Osteoarchaeology (発表予定)