高度耐塩性雑草による熱帯塩類集積土壌及び植生環境修復特性の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15405019
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 臼井 健二 筑波大学, 応用生物化学系, 教授 (80087585)
• 研究分担者: 松本 宏 筑波大学, 応用生物化学系, 教授 (10199888) ; 沈 利星 筑波大学, 応用生物化学系, 講師 (30272157) ; 小林 勝一郎 筑波大学, 応用生物化学系, 助教授 (40087606)
• キーワード: 塩類集積土壌 / 耐塩性 / 雑草 / 塩類濃度 / 修復 / 組織培養 / 先駆植物 / 土壌水分

研究概要

本研究は、タイ国の研究者との共同研究により、タイ国東北部の塩類集積地域で生育している耐塩性雑草の中から数種を選抜し、先駆植物として供試したタイ国における土壌修復実験を実施するとともに耐塩性機構を解析し、雑草による塩類土壌の修復に関する基礎的知見を得ようとするものである。
本年度は、1999年から、現地の塩類集積土壌において、数種類の雑草を栽培している実験圃場(P圃場)の維持、ならびに、高度な土壌修復効果の期待されるPanicum repenやCynodon dactylon等の耐塩性雑草を、本年より塩類集積程度が高い圃場(K圃場)での栽培を開始し、それぞれを実験に供した。なお、実験室において、イネおよびヒエ類、更に、組織培養法により選抜した耐塩性雑草を供試し耐塩性機構に関する基礎的研究も実施した。得られた成果の概要は以下のように要約される。
1.P圃場では、いずれの雑草栽培区においても、対照区(裸地)に比べ、Na集積量が著しく減少し、土壌水分含量が増加したが、こうした傾向は土壌表層ほど顕著であった。なお、このような修復効果は、P.repensで最も顕著であり、また雑草間で修復程度が異なったが、いずれも、植物体地上部による土壌被覆程度と密接に関連していた。また、すでにP.repensを主として雑草が生育していた地域において、雑草を除去して裸地とした土壌は、雑草の生育を継続していた土壌に比べ、土壌表層には、高濃度のNaが蓄積し、水分含量の低下等認められるなど、塩類集積土壌へと変化していた。上記の結果より雑草を利用した塩類集積土壌の修復は、土壌表面からの水分蒸発の抑制を主因としていると想定された。なお、K圃場は、高度塩類集積土壌であり、また、例年に比べ本年は、降水量が少なかったこともあり、全般的に生育が劣ったが、P.repens栽培区では、若干の修復効果がみられた。
2.数種植物を供試し、耐塩性機構を解析した結果、従来より言われてきたNaの体内濃度低下機能に加え、抗酸化系酵素の活性、窒素化合物、アミノ酸ならびにポリアミン類の代謝調節能が耐塩性と密接に関与していることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] T.T.H.Nguyen, K.Kobayashi, I.S.Shim, K.Usui: "Accumulation of some nitrogen compounds in response to salt stress and their relationship with salt tolerance in rice (Oryza sativa L.) seedlings"Plant Growth Regulation. 41・2. 159-164 (2003)
• [文献書誌] A.Yamamoto, I.S.Shim, S.Fujiwara, T.Yoneyama, K.Usui: "Physiochemical factors affecting the salt tolerance to Echinochloa crusgalli Beauv. var. formosensis Ohwi"Weed Biology and Management. 3・2. 98-104 (2003)
• [文献書誌] I.S.Shim, Y.Momose, A.Yamamoto, D.W.Kim, K.Usui: "Inhibition of catalase activity by oxidative stress and its relation on salicylic acid accumulation in plants"Plant Growth regulation. 39・3. 285-292 (2003)
• [文献書誌] 庄司知敬, 小林勝一郎, 沈利星: "タイ国の塩類土壌に生育するChloris barbataおよびDactylotenium aegyptiumの耐塩性"雑草研究. 48(別). 218-219 (2003)