研究課題
基盤研究(B)
本研究課題は海外学術調査の区分で採択された研究であり、本年度は主に中国の湖北省に存在する中国の完全甘ガキ系統群を調査する予定であった。また、中国の共同研究者である羅正栄教授を京都に招へいし、今後の中国でのカキ探索についての詳細を検討する予定であった。しかしながら、本年度はSARSと呼ばれる新種の肺炎が中国で猛威を振るい、また、その後も鳥インフルエンザの問題が発生し、中国への渡航を差し控えざるを得ない状況になるとともに、羅正栄教授の日本への招へいも断念せざるを得なかった。このため、当初予定していた中国でのカキ属植物ならびに完全甘ガキ系統群の調査については成果を得ることができなかった。しかしながら、中国の共同研究者である羅正栄教授ならびに楊勇助教授とは緊密に連絡を取り合っているため、来年度の調査に関しての準備は整っている。また、本年度の中国での調査は出来なかったが、研究分担者である山田と佐藤が中国から導入し、ブドウ・カキ研究部で維持している'羅田甜柿'を用い、中国の完全甘ガキである'羅田甜柿'と日本の完全甘ガキ品種の差異を詳細に検討し、完全甘ガキの特性は日本の品種でも'羅田甜柿'でも果実中のタンニン細胞の肥大が初期の段階で停止することであることを明らかにした。さらに、'羅田甜柿'の完全甘ガキとなる形質が優性である可能性から、日本の渋ガキとの交雑を実施し、今後、その後代に完全甘ガキが分離する可能性を検討することにした。なお、タイにおけるカキ属植物の探索は予定通りに実施し、数種のカキ属植物を収集することが出来た。その中にはDiospyros mollisのようにタンニンを果実中に生成しないものや、果実中のタンニン構成成分としてD.decandoraのようにガロカテキンをほとんど含まないものなどが存在し、カキ(D.kaki)の成立過程を考察する上で興味深い種を発見することが出来た。
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