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2003 年度 実績報告書

東アジアと南米における絶対寄生菌の隔離分布機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15405021
研究種目

基盤研究(B)

研究機関三重大学

研究代表者

高松 進  三重大学, 生物資源学部, 教授 (20260599)

研究分担者 佐藤 幸生  富山県立大学, 短期大学部, 助教授 (20104979)
キーワードうどんこ病 / 系統 / 進化 / 塩基配列 / rDNA / ITS
研究概要

近年、多くの被子植物の起源がゴンドワナ大陸にまでさかのぼることが明らかになっている。うどんこ病菌は植物の絶対寄生菌であり、その進化が被子植物の系統と密接に関連しながら起こったことが分子系統学的研究から明らかにされている。もしそうだとすれば、うどんこ病菌の起源をゴンドワナ大陸にまでさかのぼって考えることも可能ではなかろうか。我々はそのような考えから、南半球に生息するうどんこ病菌の分子系統解析を行い、北半球産の菌と比較することによりうどんこ病菌の起源を考えようとした。ナンキョクブナ属は、南アメリカ南部やオーストラリア東部、ニュージーランド、ニューカレドニアに分布するゴンドワナ起源の植物である。本属に寄生するうどんこ病菌としてErysiphe(Uncinula)nothofagiとE.magellanicaの2種が知られている。この2種は南米パタゴニア地方の固有種であり、形態的にも北半球産の菌とは異なる独自の特徴を有する。本研究では、これらの菌のrDNA ITS領域および28S領域の塩基配列を決定し、分子系統解析を行った。2種間の遺伝的距離(K2P法)はITS領域で8.7%、28S領域で2.1%と比較的近縁であった。他のUncinula節菌とともに作成した系統樹では、この2種は北半球産のブナ科、ニレ科、バラ科、クワ科寄生菌で形成されるクレード内に位置し、これらの菌と比較的近縁であることが明らかになった。ITS系統樹では2種は一つのクレードを形成し、28S系統樹では一つのクレードを形成することはなかったが比較的近い場所に位置した。このことから、この2種はナンキョクブナ上で一つの祖先から分化したと考えられた。高松・松田(2000)が進化学会大会で報告したうどんこ病菌のITS領域および28S領域の分子進化速度を用いてこれらの菌の分岐年代を計算したところ、北半球産の近縁菌との分化は中新世初期(25〜20myr)に起こったと考えられた。ナンキョクブナは、ジュラ紀のゴンドワナ大陸の分断と共に北半球の植物と分化したと言われている。したがって、ナンキョクブナが分化した後、北半球から何らかの方法で南米に侵入した祖先菌がナンキョクブナに寄生し、その後2種に分化したと考えるほうが適切であろう。

  • 研究成果

    (8件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (8件)

  • [文献書誌] Matsuda, S, S.Takamatsu: "Evolution of host-parasite relationships of Golovinomyces (Ascomycete : Erysiphaceae) inferred from nuclear rDNA sequences"Mol.Phylogenet.Evol.. 27(2). 314-327 (2003)

  • [文献書誌] Nomura, Y.et al.: "Teleomorph of Erysiphe necator var.necator on Vitis vinifera and Ampelopsis brevipedunculata var.heterophylla (Vitaceae) newly found in Japan"Mycoscience. 44(2). 157-158 (2003)

  • [文献書誌] Takamatsu, S.et al.: "Erysiphe wadae : a new species of Erysiphe sect.Uncinula on Japanese beech"Mycoscience. 44(2). 165-171 (2003)

  • [文献書誌] Havrylenko, M., S.Takamatsu: "Erysiphe patagoniaca : a new species of Erysiphe sect.Uncinula from Patagonia, Argentina"Mycoscience. 44(2). 149-151 (2003)

  • [文献書誌] Kashimoto, K.et al.: "Morphological and molecular characterization for a Japanese isolate of tomato powdery mildew Oidium neolycopersici and its host range"J.Gen.Plant Pathol.. 69(3). 176-185 (2003)

  • [文献書誌] Cunnington, J.et al.: "Molecular identification of anamorphic powdery mildews (Erysiphales)"Australian Plant Pathology. 32. 421-428 (2003)

  • [文献書誌] To-anun, C.et al.: "A new species of Brasiliomyces (Erysiphaceae) on Dalbergia cultrata var.cultrata from Thailand"Mycoscience. 44(6). 447-451 (2003)

  • [文献書誌] Takamatsu, S.: "Phylogeny and evolution of the powdery mildew fungi (Erysiphales, Ascomycota) inferred from nuclear ribosomal DNA sequences"Mycoscience. 45(2)(In press). (2004)

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公開日: 2005-04-18   更新日: 2016-04-21  

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