研究概要 |
多くの国で,薪炭材は日々の生活燃料として必要不可欠であるが,薪炭材の消費が森林に与える影響は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、カンボジアのカムポントム州における薪炭材の消費が森林資源の量(バイオマス)と質(生物多様性)にあたえる影響を評価し,薪炭材消費と森林資源の持続性を両立させるための方策を提示することにある。 まず、GISを用いて,州全体を国道沿い,遠隔地,および中間域の3地域に区分し,地域ごとに,そして集落からの距離ごとに薪炭材消費量と森林バイオマス成長量との関係を明らかにした。32個の森林動態固定試験地と540プロットの森林資源調査データを用いて,森林タイプごとに森林バイオマス成長量を推定した結果,国道沿いの集落からの距離が3km以内の区域では薪炭材消費がバイオマス成長量を上回っていることを明らかにした。 次に,200世帯を対象に薪炭材消費に関する詳細なインタビュー調査を実施し,3つの地域ごとに薪炭材の消費パターンがどのように異なるかを明らかにした。また,直径30cm以上の大きな樹木は薪炭材として採取されないことがわかり,バイオマス成長量と消費量のバランスについて再考する必要を指摘した。 続いて,カムポントム州32個の固定試験地の再測を行うとともに,荒廃二次林に新たに15個の固定試験地を設定し,バイオマス成長量のより正確な推定を行うための基礎資料を収集した。またココン州の固定試験地の再測を実施し、森林動態を明らかにした。 さらに、森林資源調査が行われている64クラスターを対象に、林分構造および種多様度とクラスター周囲の人口密度との関係を解析した結果、立木密度、材積、バイオマスそして多様度指数は、いずれも周囲約5km範囲における人口密度と負の相関があることを見いだした。
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