地球上の森林は熱帯地域を中心に毎年1200万haが消失している。これは我が国の森林面積の半分が消えていることになるが、こうした消失により大気中に放出している炭素は約16億トンであり人類が化石燃料やセメント生産によって放出する炭素の1/4に相当する。一方でIPCC第3次評価報告書では今後50年閏に排出される炭素の20%が生物によって吸収されると推定しており、温暖化の軽減に森林は大きな役割を果たすことが期待される。しかし、第1約束期間においては吸収源を使用したい国とそうでない国がはっきりと別れたため、吸収量の評価方法、報告様式の詳細を決めるにあたって両者の間に大きな意見の相違があった。このため、できあがった吸収源の運用法則は、出来るだけ多くの吸収量を安直に獲得しようというグループと、とにかく吸収源を実質的に機能させないような運用方法の導入を図ったグループの、政治的妥協の産物として決まった。このため、マラケシュ合意やCOP9でのAR-CDM決定文書では、森林などの生物的吸収源を適切に管理・運用できるようなルールが確立したとはいえない。 本年度はこれまでの京都議定書後に決まった吸収源関係の運用法則について分析するとともに、なぜ森林を京都議定書の目的達成のために使用したい国とそうでない国が生こたかを分析するとともに、比較的熱心に森林を活用しようとし、かつ第2約束期間で導入するかどうか議論される木材の炭素固定機能に強い関心をもつニュージーランド、及び京都議定書を離脱したものの森林の炭素固定機能という点で大きなポテンシャルを有している豪州の吸収源政策について調べた。
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