研究課題/領域番号 |
15405027
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 和夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20092174)
|
研究分担者 |
良永 知義 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20345185)
|
キーワード | Neoheterobothrium hirame / ヒラメ / 貧血症 / 寄生虫 / 単生類 / 起源 / サザンフラウンダー / サマーフラウンダー |
研究概要 |
前年度までの調査で、米国ノースキャロライナ州沿岸で漁獲された野生サザンフラウンダーと同州沿岸で漁獲され蓄用されていたサザンフランダーからNeoheterobothrium属虫体50個体、バージニア州沖で漁獲された大西洋産サマーフラウンダーからNeoheterobothrium属虫体2個体を得た。これらの寄生虫を日本のヒラメから得られたN.hirameと形態学的に比較した。 その結果、サザンフラウンダーから得られた種とヒラメから得られた種間には分類学上有意な差は認められなかった。前年度に行った分子生物学的比較の結果でこの2種には差が認められなかったことと、さらに我々が過去に行った感染実験で、ヒラメの寄生虫がサマーフラウンダーに感染したことをあわせ、日本のヒラメのN.hirameは米国大西洋岸のサザンフラウンダーのNeoheterobothrium属虫体と同種であり、何らかの経路で米国から侵入したものであると結論付けられた。 サマーフラウンダーにはN.hirameと形態学的に類似した種N.affineが寄生していることが報告されている。本研究で得られたサマーフラウンダーの虫体は形態学的にN.hirameとは異なり、別種であることが示唆された。さらに確証を得るため、現在、遺伝子の解析を行っている。 本年度、チリで行った調査で、ヒラメの一種Paralichthys adspersus 29尾を調べたが、Neoheterobothrium属単生虫はまったく見つけることは出来なかった。Neoheterobothrium属の寄生はないと思われる。一方、別のヒラメ類Hippoglossina macropsには、調べた10尾すべてにNeoheterobothrium chilensisが寄生していた。しかし、この単生類は本体と固着盤を結ぶisthomusの部分が存在しないこと、鰓弁に寄生することなどから、Neoheterobothriumには分類されないことが明らかとなった。目下、ヒラメ属Paralichthysの寄生種との遺伝子における差異を確認している。その結果、記載が不十分で、厳密な検証が出来ない一部の種を除いて、Neoheterobothrium属はヒラメ属固有の単生類であることが示唆された。
|