本研究は熱帯サンゴ礁の起源とされるインドネシア沿岸に生息する魚類を定期的に採集し、そして生殖腺の発達の年変化と月齢にあわせた変動を調べるともに、サンゴ礁魚類における月齢同調性産卵現象の広がりと成立要因を探ることを目的に行われた。 過去2年間の調査では採集した魚の生殖腺体指数(GSI)の変化から繁殖期と産卵期における産卵周期を大まかに把握できた。今年度は、国内研究として日本に持ち帰ってきた生殖腺の試料を組織学的に観察し、繁殖期と産卵周期のより詳細な検討を加えた。その結果、全ての魚種において、GSIの高い時期に採集した魚の卵巣には卵黄形成途上の発達した卵母細胞が確認できた。解析の終わっているゴマアイゴの場合、産卵期の卵巣は月齢に合わせて発達を繰り返した。すなわち、上弦の月に向かって卵母細胞が発達し、この月齢後には産卵の指標となる多くの排卵後濾胞が確認できた。この結果は、インドネシアと沖縄近海のサンゴ礁に棲息するゴマアイゴが同じ月齢で産卵していることを示しており、月から得られる情報がゴマアイゴの産卵の同期に重要な役割を持っていることが判明した。組織学的な観察から、多くの魚類に月周産卵性が成立している可能性が考えられた。 また、現地調査として以下の研究を行った。 本年度調査(平成18年1月21日から2月1日) インドネシア中部ジャワスマラン周辺海域に生息する魚を昨年に引き続き定期的に採集し、精子の運動活性から繁殖期における産卵ピークの推定を行った。顕微鏡下での精子の動きをビデオカメラで記録して日本に持ち帰った。成熟の進行に伴い精子の運動能も活発になる傾向があった。
|