研究課題
基盤研究(B)
本研究は熱帯サンゴ礁の起源とされるインドネシアジャワ島中部沿岸(ジェパラ及びカリムンジャワ)に生息する魚類を定期的に採集し、そして生殖腺の発達の年変化と月齢にあわせた変動を調べるともに、サンゴ礁魚類における月齢同調性産卵現象の広がりと成立要因を探ることを目的に行われた。研究初年度には月一回の魚類採集と市場による買い付けを行い、当該地域に棲息する魚(主にアイゴ類)の大まかな繁殖期を把握した。魚の生殖腺体指数(GSI)と生殖腺の組織学的変化から、中部ジャワに棲息するアイゴ類の多くが特定に時期に繁殖活動を行っていることが判明した。活発な繁殖活動は、特に雨季から乾季、もしくは乾期から雨季の季節の変わり目に集中する傾向が認められた。当初、熱帯サンゴ礁に棲息する魚は周年産卵を行うと予想していたが、熱帯モンスーン特有の季節性を繁殖期に利用することが明らかとなった。2年目以降は特定した繁殖期に月齢に合わせた週一回の採集と市場買い付けを行い、産卵周期と月齢との関連を明らかにした。その結果、全ての魚種において、GSIの高い時期に採集した魚の卵巣には卵黄形成途上の発達した卵母細胞が確認できた。解析の終わっているゴマアイゴの場合、産卵期の卵巣は月齢に合わせて発達を繰り返した。すなわち、上弦の月に向かって卵母細胞が発達し、この月齢後には産卵の指標となる多くの排卵後濾胞が確認できた。この結果は、インドネシアと沖縄近海のサンゴ礁に棲息するゴマアイゴが同じ月齢で産卵していることを示している。以上の結果から、魚類が棲息する地域の季節的環境変動が繁殖期を規定する要因であるのに対し、月から得られる情報が産卵の同期に重要な役割を持っていることが判明した。
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