研究概要 |
牛のレンチウイルスである牛免疫不全ウイルス(BIV)は感染牛に免疫機能低下をもたらす。これまでアメリカ、日本を中心にいくつかの国々でウイルスが分離され、その遺伝子の一部(pol, env)が解析されている。それによるとpolはよく保存されているが、env遺伝子の変位が大きいことが明らかとなっている。 今年度は、北海道ならびにモンゴルでのウイルス分離をこころみた。モンゴルの材料からは、これまでにBIVは分離されていない。日本では、まずBIV抗体調査を実施した。北海道ではほぼ10%程度の陽性率を示していた。これら陽性牛の末梢血リンパ球より3株が分離された。この3株の分離株についてまず、pol領域の解析を行なった。その結果、アメリカの分離株(R-29)と比較して塩基配列で99%から99.7%の相同性を示した。pol領域では日本の分離株でもほとんど変異がないことが明らかになった。次いでenv領域についてアメリカ株(R-29)と比較を行った。env領域のうちこれまで分離株間で比軟的保存されている領域C2,C3ならびに変異の大きいV1,V2について比較した。日本分離株ではこれらの領域の一部で増幅がみられR-29と比較した。その結果、C2,C3領域では比較的相同性が高かったもののV1,V2領域では、変異ならびに欠失がみられ、増幅できない株もあった。今後さらに、プライマーを検討して増幅させてアメリカ株との比較を計画している。
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