研究課題
基盤研究(B)
中国のヒツジに寄生するタイレリア原虫は日本カモシカに寄生する同原虫と近縁関係にあるため、わが国でも野生動物における保有状況を明らかにするための分子疫学調査を実施した。岐阜県内で捕獲されたカモシカ4頭の血液ならびに付着マダニ(Haemaphysalis japonicum)について、DNAを抽出し、タイレリア特異的プライマーを用いて16sRNA遺伝子をPCRで増幅したところ、マダニ試料から特異的な増幅バンドが認められ、ダニでのタイレリア原虫感染が確認できた。同血液を脾臓摘出したヒツジ2頭へ接種し、約2ヶ月間にわたり伝達性を検討したが、末梢血液中に原虫は出現せず、PCRでも陰性の結果となった。羊のバベシアについてLAMP法による検出法の検討を行った。異なる2地域から得られた2株のrRNA配列からプライマーを設計し、LAMPによるDNA増幅を試みたところ、それぞれ特異的なバンドの増幅が確認された。新疆地域の馬におけるTrypanosoma evansi感染の実態を明らかにする目的で、LAMPでの検出を行ったところ、90%以上の高率な感染が認められた。また、甘粛省における馬バベシア感染症を調査するため、LAMPによるBabesia equi, Babesia caballiに対する検出法を開発、それぞれEMA-2、p48を標的にしたプライマーを設計し、高感度で特異性も高い検出系を開発した。これを用いて原虫検出を行ったところ、PCR陰性例からも原虫DNAを高感度に検出することが可能であった。さらにヒツジにおけるBabesia, Theileria原虫検出用LAMPを開発し、その特異性と感度を確認した。
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