研究概要 |
中国で採集した牛バベシア原虫媒介ダニ(Rhipicephalus haemaphysaloides)からglycine-richタンパク質遺伝子を同定し,当該組換えタンパク質がダニ防除ワクチンとして有効であること,バベシア原虫に広く保存されているTRAP遺伝子をイヌバベシア原虫(Babesia gibsoni)において同定し,その組換えTRAPがバベシア感染症に対するワクチン効果があることを明らかにした。また,輸入馬におけるウマバベシア(Babesia caballi)感染のスクリーニング法として、本研究で開発したELISA法が採用された。 2004-2005年に新彊ウイグル自治区(アルタイ,カシュガル,イリ)の家畜について,バベシア,E型肝炎ウイルス(HEV),およびバルトネラ感染状況についてELISA法を用いて血清学的に検討した。イリおよびカシュガル地域のロバの9.6%(9/93),38.7%(36/93)がB.equi, B.caballiにそれぞれ陽性,2.2%(2/93)が両原虫に陽性であった。HEV感染は,牛では84.6%(159/188),豚で49.4%(39/79),羊で71.9%(110/153),馬で34.2%(27/79),ヤクでは87.2%(34/39),ロバで0.9%(1/90)が陽性であった。山羊(143頭)は全て陰性であった。以上から,同地域の牛,豚,羊,馬にはHEV感染が広く浸潤していることが明らかとなった。牛のBartonella状況は,B.bovis,(Bb)およびB.chomelii(Bc)に対してそれぞれ87.2%(123/141),および75.9%(107/141)が陽性であった。アルタイにおける陽性率(Bb:65.1%,Bc:41.9%)は他の地域(Bb:95.8-98.0%,Bc:98.0-100%)に比べて有意に低い値を示した。一方,全ての山羊がBb, Bcに対して抗体陰性であった。羊では,Bbに対し16.3%(15/92),Bcに対しては1.1%(1/92)がそれぞれ陽性であった。以上から,同地区の牛でBartonella属菌の感染が広く浸潤していることが明らかとなった。トルファン地域の放牧牛から採取したマダニ(Haemaphysalis danieli)から,新興リケッチア感染症の病原体であるRickettsia principisに近縁のリケッチアDNAを検出した。
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