研究概要 |
1.タイ全域、インド(コルカタ)、フィリピン(マニラ)、ベトナム(カントー)、インドネシア(ジャカルタ)の5ヶ国の水域堆積物中の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分析を行った。ジャカルタやコルカタでは世界的にも高濃度に分類される10,000ng/g以上のPAHs濃度を示す地点が観測された。PAHsの成分比から、熱帯アジア各都市で、先進各国ではみられない石油起源PAHsの流入が広く起こっていることを明らかにした。特にマレーシアやジャカルタでは石油起源の流入がより強く表れていた。PAHsの組成の詳細な解析とホパンの分析を組み合わせることにより、ジャカルタでは原油そのものの流入、マレーシアでは使用済みエンジンオイルの流入が考えられた。また、マニラやカントーではガソリン・軽油+廃エンジンオイル等、複合的な流入源があると考えられた。 2.堆積物中PAHのbioavailability評価のための底生生物模擬消化管液(SDS水溶液)抽出法の検討・改良を行った。従来の抽出回収プロセスを簡略化し,無希釈で直接有機溶媒と液液抽出を行うことで,少ない作業量でかつ精度良く回収できることを確認した。この手法を用いて,凍結乾燥されたタイの運河および河川底泥,道路粉塵中のPAHのbioavailabilityを評価したところ,petrogenicなPAHの方がbioavailabilityが高い傾向が認められた。 3.自動車に由来する汚染物質の中で、水銀やカドミウムなど有害重金属類を含む微量元素25元素を選択し、分析を行った。2003年度は、自動車から放出される直接・直後の被暴露試料として道路脇粉じん、及び、数年単位の時間が積分される水環境の指標試料として底質の分析を重点的に行った。その結果、熱帯アジアの都市環境において、依然高レベルの鉛が自動車の走行に起因して放出されている実態が明らかとなった。また、タイ・バンコク周辺における銀および銅、インド・カルカッタの運河におけるカドミウムなど、突出した高濃度の汚染が確認された。
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