研究課題/領域番号 |
15405044
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (70187970)
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研究分担者 |
渡邉 泉 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (30302912)
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 助教授 (30292890)
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キーワード | 多環芳香族炭化水素 / PAHs / Bioaccessibility / 疑似消化管液 / 熱帯アジア / Hopane / Benzothiazole / 石油汚染 |
研究概要 |
タイ、インド、カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシアの8ヶ国の水域堆積物を採取し、全143試料を分析した。試料は凍結乾燥後、高速溶媒抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製、分画後、GC-MSでPAHsとホパン、ベンゾチアゾール類(BTs)を定量した。 熱帯アジア各国のPAHs濃度は6-265000ng/g(n=143)の濃度範囲で、世界的な濃度レベルと比較すると熱帯アジア各国は低〜中程度の濃度レベルを示した。熱帯アジア各都市(インドを除く)ではPAHsの起源推定指標MP/P比が2以上の地点が複数存在していおり、石油起源PAHsの流入源が広く存在することが明らかになった。これは先進工業化国では燃焼起源がPAHsの主な起源であることと対照的かつ新しい知見である。さらに疑似消化管液を利用したPAHsのbioaccessibility(生物への取り込まれ易さ)を調べた結果、MP/P比が高かったマレーシアの堆積物のbioaccessibilityが高く、熱帯アジアの堆積物中のPAHsが濃度以上に生物へのリスクが高いことが示唆された。 熱帯アジア水域の石油起源PAHsの具体的な起源を推定するために(1)BTsによる推定、(2)PAHs組成のクラスター分析、(3)ホパン組成のクラスター分析、の3つの手法を用いた。その結果熱帯アジアの都市では共通して水域堆積物中のPAHsの主要な起源が路上粉塵であることが示された。さらに重回帰分析等も組み合わせ路上粉塵へのPAHs負荷源について推定した。カンボジアでは使用済みエンジンオイル、タイではタイヤが65%と使用済みエンジンオイルが35%複合した負荷源、ベトナムではタイヤが64%、ディーゼル排ガス粒子が25%と使用済みエンジンオイルが11%複合した負荷源、ラオスではタイヤが59%とアスファルトが41%複合した負荷源であることが示唆された。多くの国でタイヤの寄与が大きいと推定された点は、タイヤ起源の重金属(Cd,Zn)とPAHsの濃度の相関が高いことと調和的である。
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