アジアにおけるヒト胆道がんの発生・進展に関する遺伝子がん生物学的・分子疫学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15406008
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 三輪 正直 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (20012750)
• 研究分担者: 本荘 哲 栃木県立がんセンター研究所, 疫学研究室, 室長 ; 内田 和彦 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (90211078) ; 轟 健 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (70114105) ; 花井 修次 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (80333483)
• キーワード: 胆道がん / 肝内胆管がん / ゲノム不安定性 / ミクロサテライト不安定性 / ハムスターモデル / 蛍光ディファレンシャルディスプレイ法 / 細胞増殖

研究概要

タイ王国の東北部は肝内胆管がんの頻度が世界でも極めて高い。肝吸虫Opisthorchis viverriniの感染と食物中の発がん物質の摂取が重要な因子であるとされている。しかし寄生虫の感染がどのようにして発がんに効いているのかは、よく分かっていない。また、肝内胆管がんの発がん過程に関するゲノム変化の実態もよく分かっていない。
この発がん過程におけるゲノム不安定性の一つのマーカーとしてDNAのミスマッチ修復がどのように関与しているかを核及びミトコンドリアDNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)について調べた。その結果、タイ王国における寄生虫感染関連胆道がんの発がんは、MSIが低頻度であることがわかり、ミスマッチ修復機構が関係する胆道がんは、少ないことが明らかとなり、この結果を論文発表した(Int J Cancer 2003)。
また、この発がん過程において、発がんに必要な遺伝子発現の変化を調べる目的で、肝吸虫感染と、ニトロソジメチルアミンの投与によるハムスターの実験胆管がんモデルを用いて調べた。ハムスターの胆管がん組織と、正常組織由来のRNAを抽出し、両者のRNAに関して、蛍光ディファレンシャルディスプレイ法により、がんで発現が変化している遺伝子を調べた。現在までに数種類の変化している遺伝子を見出したので、その同定を行っている。また、肝吸虫の分泌する物質が細胞増殖を促進するかどうかについても調べている。

研究成果

• [文献書誌] Liengswangwong, U., et al.: "Infrequent microsatellile instability in liver fluke infection-associated intrahepatic cholangiocarcinomas from Thailand"Int.J.Cancer.. 107. 375-380 (2003)
• [文献書誌] Ghosh, M., et al.: "Establishment and characterization of unique human gallbladder canser cell lines"Int.J.Oncology. in press. (2004)
• [文献書誌] Hanai, S., et al.: "Loss of poly(ADP-ribose)glycohydrolase causes progressive neurodegeneration in Drosophila melanogaster"Proc.Notl.Acad.Sci.USA. 101. 82-86 (2004)
• [文献書誌] Kanai, M., et al.: "Involvement of poly(ADP-ribose)polymerase-1 and poly(ADP-ribosyl)ation in regulation of centrosome function"Mol.Cell Biol.. 23. 2451-2462 (2003)
• [文献書誌] Kotake, K., et al.: "Changes in colorectal cancer during a 20-year period : an extended report from the multi-institutional registry of the large bowel cancer, Japan"Dis Colon Rectum. 46. S32-S43 (2003)
• [文献書誌] Fukuda, K.: "E1A, E1B double-restricted adenovirus for oncolytic gene therapy of gallbladder cancer"Cancer Res.. 63. 4434-4440 (2003)