研究概要 |
1.日本、韓国の鼻腔NK/T細胞リンパ腫100症例のパラフィン包埋材料から抽出したDNAを用いてPCR-SSCP法とダイレクトシークエンスにより、P53, c-kit, K-ras, βcatenin遺伝子変異を検討したところ、日本と韓国例には以下の相異がみられた。(1)P53変異の頻度は日本62%、韓国例31%(P<0.05),(2)P53のエクソン4の変異頻度は日本31%、韓国例7%(P<0.01)、(3)有意差はないもののK-ras, C-kit, β-catenin変異の頻度は日本の方が韓国より高かった。以上の結果は鼻腔リンパ腫の遺伝子変異頻度に地域差があることを示している。以前、本研究者は中国東北部の鼻腔リンパ腫についての同様の調査を行ったが、韓国と極めて類似したデータを得ている(Cancer Sci 2003)。これらのことから、鼻腔NK/T細胞リンパ腫の発生要因として生活環境や遺伝学的な要因などの地域的な要因が考えられる。 2.そこで、農薬を含む生活環境要因と鼻腔NK/T細胞リンパ腫発生の関連を調べるための疫学調査を日本、韓国、中国東北部において行った。88例と対照305例について自記式アンケート調査を行った結果、農業従事者、穀物栽培者、農薬使用者に発生危険率が有意に高いことが判明した。又、穀物栽培に際して手袋や眼鏡を使用する人や風上から風下へ撒布するなど農薬曝露を防御する人に発生危険率が低い結果がでた。以上のことは鼻腔NK/T細胞リンパ腫発生要因としての農薬の重要性を示している。 3.現在、培養NK/T細胞リンパ腫細胞におけるEBV活性化への農薬の影響を調べるべく準備中である。 4.インドネシアの鼻腔リンパ腫35例について調査したところ57%はNK/T細胞性43%はB細胞性であった。In situ法によるEBウィルスの検索を行ったところ、NK/T細胞性の90%はEBウィルス陽性であったがB細胞性は全て陰性であった。
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