マラリア流行地において熱帯熱マラリア原虫分離株の赤血球結合蛋白がどのように発現されているかを調査することは、マラリアの感染の分子機序の解明のみならず、ワクチン開発を行う上でも重要な課題である。本研究は、流行地の熱帯熱マラリア患者から採取した分離株を材料として、熱帯熱マラリアの赤血球への侵入に関連することが強く示唆されている赤血球結合蛋白質ファミリー(EBA-175、BAEBL、JESEBL)、網状赤血球結合蛋白質ファミリー(RfRH1、RfRH2a、RfRH2b、RfRH3、RfRH4)およびRhopH1ファミリーの各蛋白質の発現様式をmRNAおよび蛋白質のレベルで解析することを目的として実施している。本年度は、タイ国の熱帯熱マラリア患者分離株を材料として、赤血球結合蛋白質ファミリー、網状赤血球結合蛋白質ファミリーおよび、PfRhopH1蛋白質ファミリーについて、患者分離株間で発現様式に差異があるか否かの検討を行った。 熱帯熱マラリア原虫は、タイ国内のマラリア流行地において患者の同意を得た後に採血し、直ちに培養液に浮遊させて培養し、成熟分裂体または遊離メロゾイトを得た。これらの流行地の患者から分離した熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入型原虫からmRNAの抽出を行った。PCRマスターサイクラーを用いて解析した各赤血球結合蛋白の塩基配列を基にPCR用のオリゴヌクレオチドを作成した。熱帯熱マラリア患者株から抽出したmRNAを鋳型として定量的RT-PCR法により患者分離株における各蛋白の、mRNAの転写レベルの測定を行った。また、各赤血球結合蛋白に対し、特異抗体があるものについて、蛍光抗体法によって、患者分離株における各蛋白発現量を測定し、比較検討中である。
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