マラリア流行地において熱帯熱マラリア原虫分離株の赤血球結合蛋白がどのように発現されているかを調査することは、マラリアの感染の分子機序の解明のみならず、ワクチン開発を行う上でも重要な課題である。本研究では、流行地の熱帯熱マラリア患者から採取した分離株を材料として、熱帯熱マラリアの赤血球への侵入に関連することが強く示唆されている赤血球結合蛋白質ファミリー、網状赤血球結合蛋白質ファミリーおよびRhopH1ファミリーの各蛋白質の発現様式を転写レベルおよび蛋白質レベルで解析することで、どの分子が主要であるかを検討することを目的とした。 本年度も昨年度に引き続き、平成15・16年度に標本採取を行った地区において同様に熱帯熱マラリア患者からマラリア原虫流行地株を採取した。赤血球結合蛋白の塩基配列を基に作成した定量的RT-PCR用のオリゴヌクレオチドを用い、熱帯熱マラリア患者株から抽出したmRNAを鋳型として定量的RT-PCR法を行い、患者分離株における種々の分子のmRNAの転写量を測定した。その際に、RhopH1ファミリーの分子は、非常に多型であり、オリゴヌクレオチドのデザインに注意が必要であることがわかった。各赤血球結合蛋白に対する特異抗体を用いて、患者分離株における各蛋白発現量を蛍光抗体法によって検討したが、RhopH1については、ファミリー・メンバー間で最も異なる部位は、同じ分子内でも多型性を示し、各メンバーを区別し、かつ、分子内で多型性を示さない部位に対する抗体を作成する必要があることが分かってきた。
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