研究課題/領域番号 |
15406022
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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研究分担者 |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (90081661)
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90322908)
伊藤 俊弘 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20271760)
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キーワード | 砒素中毒症状 / 個体差 / 中国 / 細胞培養 / 動物実験 |
研究概要 |
研究代表者らが1999年より中国内モンゴル包頭で行っている慢性砒素曝露住民のフィールド調査によって知りえた慢性砒素中毒の主症状である皮膚症状の発現の個体差の存在について、実験室における動物実験および培養細胞を用いた研究と現地フィールドでの詳細な観察とを有機的に結びつけて個体差の起こる機序の解明と、最終的には皮膚症状の改善と新たな発症患者の予防、さらに既曝露者の皮膚発癌の予防につなげる知見を得ることを本研究の目的とする。しかし2003年春から中国全土で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のために、フィールド地域での研究受け入れ機関である地方政府衛生局や防疫所(日本での保健所)が多忙を極め、秋まで対応不能の状態となった。そのため、晩秋になって中国の共同研究者である孫教授と連絡を取り、内モンゴル自治区衛生部および包頭衛生局と交渉しSARS患者の発生が無いことを条件に調査への協力を取り付け、12月9日から13日の日程でフィールドを訪れた。包頭は我々のグループにより飲料水改善の介入を行っているフィールドであるが、改水後1年でかなりの症状の改善が見られたものの、今回の4年後の観察ではその後の改善の度合いは緩慢であった。来年度の改水5年後の夏季に、先に症状発現に影響を及ぼすことがわかっている砒素のメチル化能による症状改善の度合い、さらに悪性腫瘍の発生の有無を確認することを含めた調査を行うことで現場と調整を図った。また、3月4日から9日まで遼寧省藩陽市の中国医科大学を訪れ、近郊の農村地域での調査を行った。孫教授の研究室をベースとすることにより、培養を伴う検査を行う実験の実施を考えての調査であったが、同地域は地下水飲用によるフッ素中毒が多発するものの砒素中毒は見られなかった。実験室内での研究としては、ヒト・ケラチノサイト細胞を不死化した細胞株HaCaTにおいて低濃度3価無機砒素の添加により増殖が亢進するなど、正常ヒト・ケラチノサイトNHEKと同様な性質を示すことが確認され、低費用にて多くの実験が可能となることがわかった。次年度に、ケラチノサイトの他、メラノサイト、平滑筋細胞などを用い、砒素中毒患者の症状に相当する現象をin vitroで発現させ、症状発現の機序と個体差の発現の解明を目指す。さらに、in vitroにて確認された現象発現にかかわる因子について、砒素中毒患者から得られる検体を用いて確認する予定である。
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