研究分担者 |
柴田 英治 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (90206128)
上島 通浩 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80281070)
市原 学 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90252238)
王 海蘭 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 外国人特別研究員
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研究概要 |
近年、アジア諸国のトリクロロエチレン(TRI)使用職場で全身性皮膚・肝障害の発生が問題になっている。病因・病態に不明点が多いが、臨床所見は薬剤性過敏性症候群(DIHS)とも呼ばれる重症型薬疹や薬剤性肝障害に類似している。皮疹や肝障害は一般に感染症によっても生じることが知られ、特に、ヘルペスウイルスやマイコプラズマについてはDIHSとの関連の可能性も指摘されているため、これらの合併の有無を明確にする必要があると考えられる。本研究では、患者及び曝露対照者で感染症の血中抗体価を調査し、あわせて免疫学的指標を測定した。 2002-3年に中国南部で発生した患者32人の血清(患者群:剥脱性皮膚炎(ED)21人、多型紅斑7人、皮膚粘膜眼症候群(SJS)2名、中毒性表皮壊死融解症1名、病型不明1名)および患者発生工場の非発症作業者32人の血清(対照群)について、1)単純ヘルペスウイルス1,2型(HSV-1,2)、2)EBウイルス、3)サイトメガロウイルス(CMV)、4)ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、5)風疹ウイルス、6)麻疹ウイルス、7)マイコプラズマの抗体価を測定した。また、血清中の総IgEをEIA法で、IFN-γ、IL-4、IL-5をELISA法にて測定した。 症例群のうち8例でHHV-6抗体価の異常高値(256倍以上)が認められ、2例で麻疹のIgM抗体が陽性だった(表)。HHV-6抗体価上昇者にはSJSを除く3病型がみられ、麻疹IgM抗体陽性者の病型はED, SJSだった。対照群では、いずれの感染症についても採血時直近の感染を示す抗体価の著しい上昇はみられなかった(表)。総IgEは患者群が高値(p<0.05)だった。IL-4,5は群間に有意差はなく、IFN-γは患者群で高値(p<0.05)であった。 TRI関連皮膚肝障害の一部ではHHV-6ウイルスの再活性化が生じていると考えられた。突発疹の原因ウイルスであるHHV-6のDIHSにおける再活性化が最近注目されているが、TRIへの曝露とHHV-6再活性化の原因となりうる免疫力低下との因果関係や、皮膚肝障害の発症機序におけるウイルス再活性化の意義、麻疹など他の感染症の関与の有無について、今後さらに検討が必要である。
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